最近、少しずつ時計が読めるようになってきたトミー。
まだ色々と課題はあるものの、「今、何時?」という質問には、だいたい答えられるようになってきました。
「時計が読めるようになったお祝いに、腕時計を買ってあげよう!」
そう決めて、一緒に時計売り場へ向かいました。
最初は、お勉強のためにアナログの時計を買うつもりだったんです。でも、いざ売り場に連れて行くと、トミーが食いついたのは赤と黒のかっこいいデジタルスポーツウォッチ!
それとなくアナログの方へ誘導しようとすると、みるみる顔が険しくなり、足踏みをして抗議し始めます。
これは危険……!と察知して、「もう、好きなのを選んでいいよ~!」と降伏しました(笑)。
本人が気に入ったなら、デジタルでも何でもいっか!
……そう微笑ましく思っていたのですが、ここで思わぬ壁にぶつかりました。
息子の手の特性と、腕時計の「壁」
トミーは生まれつき、両方の肘に骨の奇形があります。
前腕の2本の骨がくっついてしまっているため、「手のひらをクルクルと上下に動かす動作(回内・回外)」ができません。
ドアノブを回したり、手で水をすくったりする動きが難しいのです。
日常生活のあらゆる場面で不便はあるのですが、生まれつきなので、本人も上手い具合に代わりの方法を見つけて対応してきました。だから私も、普段はあまり気に留めていませんでした。
だけど……腕時計をつけてみて、ハッとしました。
文字盤が、どうしても見られないんです。
手の甲側につけても、手のひら側につけても。右手につけても、左手につけても。
時計を見るためには、どうしても「手首をくるっと回す動作」が必要だったのです。
トミーは何度も何度も、頑張って腕を動かそうとしました。でも、どうしても文字盤がこっちを向いてくれません。
悔しさと、どうにもならないもどかしさで、とうとう癇癪(かんしゃく)を起こしてしまいました。
「そっか……気づいてあげられなくてごめんね」と、胸が締め付けられるような気持ちになりました。
諦めていた私と、諦めなかった息子
それからは腕につけるのを諦めて、いつもリュックの紐にキーホルダーのようにぶら下げて持ち歩いていました。
でも、トミーはやっぱり「腕に時計をつけたい」という憧れがあったようです。
遊びに行く時は、自分では見られないはずなのに、毎回うれしそうに腕にはめて出かけていました。
そんな、ある日のことです。
公園で遊んでいる時、私が何気なく「今、何時くらいかな~」とつぶやきました。
するとトミーが、自分の腕時計をパッと見て、
「ママ、〇時〇分だよ!」
と手際よく時刻を教えてくれたのです。
え、なんで!? 見えないはずじゃ……?
驚いてトミーの手元をよく見てみると、思わず「なるほど!」と声を上げそうになりました。
子どものたくましさに、大人が教えられた日
トミーは、腕時計のベルトをブレスレットのように、わざと「ゆるゆる」の状態にして腕につけていたのです。
そして時間を見る瞬間に、動かない手首の代わりに、反対の手で「時計の本体(文字盤)のほうを、くるっと回して」自分の顔に向けていました。
言われてみれば、なんてことはない工夫かもしれません。
でも、「腕が回らないなら、時計を回せばいいんだ」という逆転の発想に、私はまったく気づけませんでした。
「見えないから無理」と、すぐに諦めてリュックにつけてしまった自分が、なんだかちょっぴり不甲斐なく思えた瞬間でした。
大人が「できない」と決めつけてしまっても、子どもは自分の力で、新しい答えを見つけ出す。
もともと動かせない手首を、色んな工夫でカバーしてきたトミーは、今回の壁もちゃんと自分で乗り越えていました。
我が子の持つ「適応力」と「たくましさ」に、またひとつ、大切なことを教えられた気がします。
その調子で、これからもたくましく育ってね!


