トミーは、自然体験学習をものすごく楽しみにしています。
1泊2日で、山へ行きます。
みんなでカレーを作ってキャンプファイヤー。
みんなでごはんを食べて、お風呂に入って、一緒に寝る。
トミーにとっては、楽しみなことしかない。
ということで、自然体験学習の説明会に行ってきました。
トミーは小麦と卵のアレルギーがあります。
だから、まず心配なのは食事。
そして、発達特性や知的障害もあるので、日常生活のことも心配です。
行く前から、親の頭の中には心配事が次々と浮かんできます。
「食事はどうなるんだろう」
年度が始まってすぐの個人懇談で、先生からこんな話をされました。
「自然体験学習では、2日目の食事を届けに来てもらわないといけないかもしれません」
片道3時間。往復6時間の山の中。
……そんなばかな。
そのときは正直、そう思いました。
でも、アレルギーのある子どもが学校の宿泊行事に参加するということは、こういうことなのか。
なんだか大きな壁を感じました。
もちろん、食事を提供する側に何もかも対応してもらうのは無理がありますが。
でも、「親がお弁当を届ける」以外の選択肢もありますよね!?
冷凍したお弁当をもたせて保存してもらうとか。
レトルト食品を持たせるとか。
可能なら現地調達でもいいけど。
最近はグローバルな時代になって、宗教的な理由や文化の違いから、食べられるもの、食べられないものがある子どももいます。
もう少し融通が利くと助かるんですけど……
こういう場面では、いつも親の捨て身の犠牲を求められている気がします。
「自分たちの都合なんだから、どうにかしてみんなに合わせるのが当然」
そんな暗黙の了解があるようで。
ところが、説明会で聞いたのはうれしい話
「アレルギーが心配なお子さんは、お弁当を冷凍して持ってきてもらえれば、現地で冷凍保存します。食べるときに温めます」
「お弁当ではなく、パックごはんやレトルト食品を持たせてもらっても大丈夫です」
素晴らしすぎます。
私が思う以上に、学校も、現地の方も、いろいろ工夫してくれているようです。
心の中で暴言を吐いて、すみませんでした。
「食べられればいい」わけじゃない
もう一つ、うれしかったことがあります。
自然体験学習では、班に分かれてカレーを作って食べます。
トミーは小麦アレルギーなので、どうするのかと思っていたら、アレルギーのある子どもたちのために「米粉のカレー班」を一つ作ってくれるそうなんです。
これも、本当にありがたい。
最悪の場合、米粉カレーのレトルトを持たせようかと思っていました。
でも、トミーはみんなと一緒にカレーを作ることを楽しみにしているんです。
「カレーが食べられればいい」という話ではないのです。
みんなと一緒に、切って、炒めて、混ぜて、盛り付けて。
それが楽しみなんです。
料理男子なので。
ちなみに、一日目にみんなに配られるお弁当は、トミーが食べられるものが一つもありません。
市販のお弁当って、だいたいそう。
卵や揚げ物が入っていないお弁当を探すほうが難しい。
これはもう仕方がないので、一日目はお弁当を持参することにしました。
食事が解決しても、心配はまだまだ
アレルギーについては、思っていた以上に配慮してもらえることが分かって、少し安心しました。
でも。
私の心配は、食事だけではありません。
むしろ、ここから。
お風呂、一人で入れるかな
トミーが一人でお風呂に入れるように、実は3年前から特訓しています。
でも、まだ難しい。
顔に水がかかるのが苦手なので、頭を自分で洗えません。
顔を水から守ることに必死すぎて、髪を洗うどころではないんです。
体も、一人で入るとタオルでちゃんとこすりません。
すぐに手を抜いて、「もう出る!」となります。
でも今回は、一日くらいどうってことないでしょう。
……ということで、ここはスルー。
歯磨きは、歯ブラシだけでは終わらない
トミーはもともとの疾患の特徴で、歯がとても弱い。
今も歯にあちこち大きな穴が開いていて、そこに食事のたびに食べ物が詰まってしまいます。
だから普段は、仕上げ磨きだけでは足りません。
歯ブラシ、フロス、ピンセット。
この三点セットで穴に詰まった食べ物を取り出す必要があります。
詰まったままだと痛いことが多いので。
さらに虫歯が増えてしまいます。
でも、これも。
一日くらい、どうってことないでしょう。
おもらししたら、からかわれないかな
おもらしも、結構な頻度であります。
といっても、布団がびしょびしょになるほどではありません。
下着が汚れるくらい。
家族で旅行するときは、防水シーツや防水の短パンを持って行きます。
でも、今回は学校行事。
周りの目があります。
そして何より心配なのは、トミー本人がまったく気にしないこと。
みんなの前でも、濡れたパンツを普通に履き替えてしまうくらい、何も考えていません。
それはそれで、トミーらしくていいのだけれど。
あとから「おもらしした」とからかわれたり、いじめにつながったりしないかな。
そこはやっぱり心配になります。
家では寝る前に必ずトイレに連れていきます。
でも、学校の宿泊行事で、そういうわけにはいきません。
うーむ……心配。
「○時集合」が、トミーには難しい
時計を見て、「今何時?」は分かるようになってきました。
でも、「○時に集合」となると、急にハードルが上がります。
それって今からどれくらい先なのか。
何分後なのか。
「お風呂は15分で出て」と言われても、15分の感覚が分からない。
15分後が何時何分なのかも分からない。
周りを見て判断することも苦手。
きっと、時間を守れないことで怒られるんだろうな。
こういうことって、一から十まで親が先生に「できないので配慮してください」とお願いすることなのだろうか。
お願いし始めたら、きりがない。
どこまで伝えればいいのか、だんだん分からなくなってきます。
「お茶が嫌い」というだけなのだけれど
お茶が飲めないわけではありません。
嫌いなんです。
トミーは水しか飲みません。
ジュースは飲むんですけど。
発達特性があるので、「飲まない」と決めたら本当に飲みません。
飲み物がお茶しかなくても飲まない。
脱水で倒れそうになっても、飲まない。
二日目には、宿で水筒にお茶を入れてくれるらしいです。
「水にしてもらうことはできますか?」
とお願いしたいけど。
宿には給水場所があって、お茶のやかんが置いてあるそうです。
そこに、水もあったらうれしいんだけど。
……これは、わがままなのだろうか。
薬を自分で飲むのも、実は大仕事
普段飲んでいる薬もあります。
トミーは薬をそのまま飲めないので、小さなカップに薬を3つと少量の水を入れて、溶かして飲ませます。
それから吸入の薬もあります。
これを「自分でやってね」と言われても、なかなか難しくて。
トミーは、細かい作業が苦手なんです。
ハサミも上手に使えません。
鉛筆削りも、一方向に回せず、右、左、右、左とぐりぐりやるので、まったく削れません。
レゴブロックも、小さいものはうまく扱えないので、大きなデュプロのほうを好んで使っています。
そんなトミーが、小さなカップに薬を3つ入れて、水を少量入れて、混ぜて、飲む。
……うまくいくわけがありません。
薬を入れるところから、水を入れるところ、混ぜるところ、飲むところ。
あらゆる段階でこぼす姿しか目に浮かびません。
もう、あげたらきりがない
一つ一つを考えていたら、とてもじゃないけれど宿泊行事なんて行けません。
まぁ、なんとかなるでしょう。
一泊二日だし。
別に命にかかわるようなことにはならないでしょう。
最後は、そんな境地です。
なんだか急に雑。
一見、自分でできそうに見えることが壁
トミーの場合、いちばん難しいのは、一見すると自分でできそうに見えることなのかもしれません。
学年が上がるたび、新しい担任の先生に何度も説明します。
苦手なこと。
わかっていないこと。
でも、なかなか伝わりません。
トミー自身も、「分かったふり」がとても上手なんです。
分かっていないと思われるのが嫌なのだと思います。
だから、先生に何か言われても「はい」と返事をします。
でも、本当は分かっていない。
そして、うまく助けを求めることもできない。
結果として、怒られる。
あるいは、とんでもなく困った状況になっても、それを一人で耐え忍ぶ。
親としては、それがものすごくもどかしいです。
「できない」「手伝って」「分かりません」と言えたらいいのに。
そんなことを思いながら、説明会から帰ってきました。
さて。
一泊二日。
まあ、なんとかなるでしょう。
楽しんできてね!

